My everyday life from Yeosu/여수/麗水, Korea.
2015/07/31
戦利品と知的興味
話の発端はこうだった。
父と母とお酒を飲んでいた夜のこと。私が韓国の既得権益集団は植民地時代と深く関係があるということを話していたら、父が台湾に行ってきて感じた、台湾の既得権益と植民地時代との関係の話になった。そこから既得権益と植民地というテーマになり、それをいったら、やはりイギリスのインド植民地と莫大な資産を持つイギリスの既得権益たちだよねという結論に至った。イギリスは永遠だという皮肉を吐きながら。
イギリスがらみでアフリカはケニアの話になり、そこから父と母が鑑賞した「おじいさんと草原の小学校」という映画の話になった。イギリス植民地から独立したケニアでおじいさんが小学校に通う話で、おじいさんの植民地時代の描写が残酷且つリアルでイギリスについて再考察する際の材料なったというのが父の意見。そこから映画がらみで岩波ホールの話題に移った。
そこで、私の知的興味を思いきり揺すぶられたテーマに出会ったのだ。
岩波ホールは父を含め母も弟もよく通う映画館。特に父はこれだと思う映画が上映されるとすぐに鑑賞しにいくのだが、そんな父が今まで岩波ホールで観た映画の中で一番印象的だったというのがワイダ監督の「カティンの森」だと言ったのだった。
カティンの森とは第二次世界大戦中に実際に起こったカティンの森事件を題材にしたポーランド映画。カティンの森事件とは、簡単に言うと、第二次世界大戦中にポーランドに侵攻したソ連が捕虜としてポーランド軍の将校や少尉たち2万人を拘束し、森の中で虐殺した事件。大戦中にこの事件は明るみになるが、冷戦後のポーランドは共産圏。ソ連下ではこの話題に触れることも許されなかったそう。
監督ワイダ自身の父親もこの事件の犠牲者の一人。彼自身ライフワークとしてずっと事件の究明を続けていたそう。89年の民主化を経て、ようやく映画が完成したのはワイダが80歳を超えてから。父曰く、ワイダの執念を感じる作品だったそう。
と、前置きが長くなったが、私の今の知的興味の対象は「ポーランド」
ドイツとロシアに挟まれて、戦時中は両国から侵攻された国。44年のワルシャワ蜂起を含み、悔しくも両国に翻弄されたこの経験が国民にどう反映されているのか、今のポーランドの社会や空気にどう影響を与えているのか、を猛烈に知りたくなった。
ということで、日本で買ってきた戦利品。中山先生がご夫婦で書かれた「東欧圏の露頭ポーランド―風土と歴史―」をまず読みながら、ポーランドに対する自分の疑問への答えに少しずつ近づいていく計画。調べてみたら日本はポーランド研究の文献がかなりあって、基礎固めとしてまず初めにどれを買おうかと迷ったけれど、これにした理由は第四章の「スラブ民族と塩」という部分のそそられたから。塩を軸にポーランド地域のスラブ民族について論じているなんて!!こりゃあ、おもしろそう、読まなくちゃって興奮したから。
こんなにもポーランドに興味をそそられるのは、父の「カティンの森事件が冷戦の引き金となっている」という発言に衝撃を覚えたという理由もある。冷戦の最初の引き金となったのは、大戦下であってしかもポーランド問題だったという意見に思い切り知的興味を揺すぶられた。ゆえに、父から永井陽之助の「冷戦の起源―戦後アジアの国境環境」の「第三章 リヴァイアサンの火」の「三 悲劇の根源―ポーランド問題」を参照文献としてコピーさせてもらい持って帰ってきた。
もちろん、ワイダ渾身の作品「カティンの森」も週末時間がある時にドンちゃんと鑑賞する予定。すでに韓国語字幕を準備した。いや、本当はこうゆうのは大学院時代の友人たちと日本酒を飲みながら鑑賞して、熱く語りたいのよ。それができないのが悲しいが、しかし私は自身の知的興味から来るポーランドに対する疑問を色んな本を読んで映画を見て自分の言葉で解決をして二人に聞いてもらうのだ。
と、日本から買ってきた戦利品の二つ目。これはけっこうかなり本気の戦利品。「日本民族文化大系9 暦と祭事―日本人の季節感覚―」という名前だけ聞いても、ヤバいぐらい素敵な本だとわかる装丁も立派な本。民俗学の大家たちの論文が集まっていて宮田登が著者代表として載っていたのが購入理由。しかも、なんと昭和55年で4500円、今だと1万円は超える。さらに古本なのに誰かが読んだ形跡ゼロ。それを400円ぐらいで買った私。ひゃっほー。
宮田先生に期待していたのだけれども、それを上回ったのが「第四章 祭りー原空間と民俗」、タイトル読んでびっくり、原空間と民俗って!!原空間だよ!!この本の中でも異彩を放っている。著者は薗田稔、やっぱりね。さすがだと唸った。
ってまだ読んでないけど、大事に読むの。
以上、日本で買ってきた戦利品二冊とそれにまつわる自分の知的興味についての話でした。私の知的興味を刺激してくれる父にはいつも感謝。
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