またヨスと光州を行ったり来たりの毎日が始まった。
二週間ぶりの陶芸は力の入れ具合がうまく掴めなくて、回転の中心を据えるのに少しだけ苦労した。でも何回も繰り返していくうちに勘が戻ってきて、遠心力の中で土の中心を掴んだ瞬間、韓国における自分の位置もきっちりそこに収まった感じがして、ちょっと安心できた。
陶芸をする日は、土を触る前にコーヒーを飲みながら本を読んで気持ちを落ち着けたい。ゆえに、いつも早めに到着して工房の近所のカフェに寄ることにしている。そこのカフェは特別にコーヒーが美味しいわけではないんだけど、個人がやっているカフェの割には店内が広く、窓際に並んだ黒の革張りの椅子と木のテーブルの色合いが素敵で、お気に入り。チーズトーストもなかなか美味しかった。
そのカフェで、時々、陶芸の先生夫婦が一緒にコーヒーを飲んでいるのを見かける。私が通っている工房は旦那さんが陶芸家で、奥さんが画家。毎日2人は工房で陶芸を教えたり絵を教えたりしながら自分の創作活動をしている。もちろん、私は先生夫婦が大好き。作品もそうだけど、何より人として好き。先生たちが紡ぎ出す言葉の一つ一つから、素晴らしい人格の持ち主だとうことがわかる。そして、二人は工房の中でも本当に仲良しで、いつも一緒にいる。
この日も先生たちが2人でコーヒーを飲んでいて、その光景があまりに素敵で声をかけるのも忘れて見とれてしまった。あんなにいつも一緒にいるのに、まるで共有しなくてはいけないことがどんどん溢れているように、熱心に相手に伝え、熱心に相手に耳を傾けるその姿にとても感動してしまったんだと思う。結局、二人の世界を壊すようだったので声はかけず、私は私の世界で本を読むことにした。二人は私よりも早めに工房に戻り、その後たっぷりと時間をとり、私は工房に向かった。
私もドンちゃんと共有したいことが、毎日毎日溢れてくる。昨日の夜はそれが溢れすぎて、ダムが決壊するようにドンちゃんにたくさん話してしまった。
まず、ヨスに向かう帰りのバスで聴いていたBoyz Ⅱ Menがマイケルジャクソンの「Human Nature」をカバーした音源の音色が、消灯された電気の横が赤く光るバス内の空気とピッタリ雰囲気が合っていたこと。一音一音がバスの中で弾けて吸い込まれていくようだったこと。
次に日本で観てきた抽象画といつも読んでいる文学作品たちが同じだということ。その同じを以って私も陶芸に励みたいこと。そして自分が陶芸という手段で表現したいことがようやく生まれたということ。そこには古代ヘブライ語とバッタ、わたりガラス、trick starがキーワードになってくるということ。その発想が自分の中で生まれた時、泣きそうだったこと。
最後に、私を悲しくさせる時間という観念について。帰りの飛行機で日本で過ごした私の二週間がどこに行ってしまったのかと悲しくて仕方なくなってしまったこと。時間を流れると据えるのならば、いっそ、時間という概念なしに生きることにしたいこと。インディアンのホーピ族は時間と空間という概念がなく、その代わりに「顕現した、顕現する」という枠組みで宇宙を説明しているということ。ならば、過ぎ去った時間を顕現したと据えることで、もしかしたら私は救われるかもしれないと、考えていること。
そんなことを全部ドンちゃんと共有したくて、熱心に深夜まで話してしまった。
こんな内容を真剣に話せる友人は日本でも数人ぐらいしかいない。ドンちゃんはいつも、もちろんこの日も、熱心に聞いてくれて、私の作品作りに興味を示してくれ、時間について彼の持論を聞かせてくれ、また、同じ例として「言葉」について考えていることを語ってくれた。それは私にとっても興味深いものであり、それを共有することでまた一つドンちゃんを理解できた気がするものだった。そしてドンちゃんは最後に必ず私を讃えてくれる。「マイベイビーはrawだね」って。
こんな内容を真剣に話せる友人は日本でも数人ぐらいしかいない。ドンちゃんはいつも、もちろんこの日も、熱心に聞いてくれて、私の作品作りに興味を示してくれ、時間について彼の持論を聞かせてくれ、また、同じ例として「言葉」について考えていることを語ってくれた。それは私にとっても興味深いものであり、それを共有することでまた一つドンちゃんを理解できた気がするものだった。そしてドンちゃんは最後に必ず私を讃えてくれる。「マイベイビーはrawだね」って。
自分の頭の中に溢れてくる考えや疑問ってものすごく個人的なものだから、こうやって誰かと共有できることってかなり貴重なことだ。共有とは、私とドンちゃんにとって精神的な繋がりな気がする。それは相手をより知りたい、相手により自分を知ってほしいという気持ちと行為であり、つまり愛情というものを噛み砕いた時の破片の一つのような気がする。人はその人をより深く知っていきながら、その人をより愛していくんだな。
10年後も、先生たちみたいに私たちは熱心に会話をしているのかな。相手に知ってほしいことや、相手についてしりたいことがコンコンと溢れて、今より深く好き合っていればいいな。そうゆう「未来」を「今の2人」で共有しよう。
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