あんなに完璧な丸が、この地上ではなく遥か離れた誰も手に届かないところに、しかし目ではしかと見えるところに、あるなんて。この事実がこの世界に対する強烈な皮肉のように思えます。
煌煌と輝く月を見ているといつも思い出すこと。星野道夫さんの「森と氷河と鯨」という本の中に載っているインディアンの詩。
月の光を浴び続けろ。いつか、月が気づくはずだ。お前が月だって。
星野さん。今の私を作った様々な要素の一つだと、間違いなく言える存在。
小学3年生の時に星野さんの本に出会い、ファンレターも書いた。出版されてる本は子供向けも大人向けも全て買ってもらい、熱中して読んだ。4年生の夏にアラスカに一番近いからと、北海道の根室に家族旅行。そしてとうとう5年生の夏、家族でアラスカ旅行が決まったその夏に、星野さんはロシアで亡くなってしまった。
その悲しいニュースを聞いたのは暑い朝。今でも覚えている。寝起きの私にお母さんが「星野さんが亡くなったのよ」と言った瞬間のこと。嘘だ、と泣きながら、家の日経新聞で小さく記事になっているのを読んで、その瞬間に本当なんだと実感したこと。
あの夏のこと、家族で行ったアラスカ、あれからもう20年も経つなんて。でも、何一つ色褪せない。星野さんが綴る文章も、その写真も、それを通した私の記憶だって、いつだって色は鮮やか。これからも、ずっとそう。
同時に、星野さんがいない世界への失望も、20年経った今でも、強く感じる。彼にしかできなかった仕事があった。それを残したまま亡くなってしまいった。残念で、残念で、しかたがないこの気持ちを、彼のファンの一人としてこれからも私は抱えていくことになるんだろう。
写真は、没後20周年で星野道夫特集を組んだ雑誌三冊。Aちゃんから本屋に売っていると教えてもらって、全てアマゾンで購入。
ドンちゃんと歯を磨きながら、月を眺めた夜。星野さんの話をして、彼を偲んだ夜。
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