カフェで手帳を開いたら、記憶をギュンとさせる懐かしい匂いがした。すぐには思い出すことができなくて、その香りを嗅ぎながら、紙芝居をめくるように記憶の中の一つの場面を探していく。めくる指が止まり、記憶が蘇る。そうだ、古本の匂い。正確には古本屋で買ってきた漫画の匂い。自分の家のとは違う、どこかの誰かの家の匂い。匂い自体は好きでも嫌いでもなかったけれど、よく古本屋で漫画を買って、家族で夕食を食べた後に部屋に戻り買ってきた漫画を読むことが好きだったから、記憶にすごく残っている。読みふけって、お風呂に入るのが遅くなっちゃうんだった。
なぜ私の手帳がその匂いと同じなのか、もしくは、その記憶とリンクさせる匂いなのか、そのわけはよくわからないけれど、それは古本屋で買った漫画の中で好きだった漫画を自動的に思い出す結果になった。
斎藤倫の「世界はみんなボクの為」、主人公の名前もおぼろげだけど、一番好きだった。自己中心的で自分勝手な主人公(男)が、その性格ゆえに自分で自分に苦しむんだけど、最終的にはそこを乗り越えていく物語だった気がする。偶然にも、「中途半端な自分を受け入れるしか、人生を生きる術はない」という言葉に触れ、ゴーンと衝撃を受けた直後だったから、上手くいかないその訳は自分勝手な自分にあるということを知って絶望して、でもそんな自分を受け入れていきながら、人に優しくなっていく漫画の主人公がなんだか恋しくなった。あの時よりもずっと私は主人公に共感できる気がする。
さて、話は全然変わってしまいますが。。。写真は2人お気に入りに백반집で出されるおかずの一つである卵焼き。백반집とは韓国でいう定食屋さんなんだけど、とっても庶民的で、タクシードライバーのおじさんたちが一人でご飯を食べている、そんなイメージ。
キムチチゲとか定番のメニューを頼むとたくさんおかずが出てきます。卵焼きはその一部。家から歩いて15分のところにこのお店があるので、休日のランチにお散歩も兼ねて二人でよく行きます。お店には家族連れもいれば、若いカップルもいて、いつも人で賑わっています。そこで働くおばちゃんたちも気前が良くチャキチャキしてて好き。おぼんに載ったおかず達を私も一緒にテーブルに移すのを手伝ったら「이뻐 이뻐 넘 이뻐」と褒めてくれました。
この日はキムチチゲと뼈다귀해장국(豚の背肉入りスープ)を頼みました。ものすごく寒い日だったので、熱々のフライパンを濡れ布巾の上に乗せたときのような、熱々がジョワっと身体に染み込んでいく感じがして、美味しいの上の美味しいだった。幸せ。
このお店、私もだけど、ドンちゃんもお気に入り。それはやっぱりこの卵焼きが出てくるから。中身がギュッと詰まっているのをみるとおそらく卵4つは使っている気がする。そこに人参とネギのみじん切りが入っていて、で、それだけ。それだけなんだけど、それが素朴で美味しい。普段、キムチすら食べない、韓国料理に執着しないドンちゃんが、食べながら고향집의맛って言ってたのが印象的だった。日本語に訳すと、故郷の家の味、でもこれは比喩表現。要は懐かしい味だってこと。
普段家では私が食べたいものを作っているから、エスニックだったりイタリアンだったり和食だったりで、韓国料理はあまり登場してないことに、少し反省。まさに、世界はみんな私の為、私は自分中心で世界が回っていると思っている節があるからな。
ドンちゃん、ごめんね、週末にまた食べに行こう。ふふ。
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